少年は魔物を恐れなかった 彼は既に無数の異形に遭った 

闇に住まう者たちもまた 産まれたばかりの英雄を恐れなかった 


若者が恐れたものは唯一つ 脅すように翳された松明 

人であれば その強大な力を知る 

魔獣が恐れたものは唯一つ 爛々と輝く聖なる剣 

魔であれば その強大な力を知る 


彼らは 互いに 魅入られたように 立ち尽くした 

少年は 禍々しい瞳に映る自分の姿が 揺らぐのを感じた 


(奴らが術をかけたのか? いや、違う……) 



楕円に開かれた門から 森厳な女が現れ かれに手を差し伸べる