小石のような芋が転がる痩せた土地を踏みしめ、少年は遠い故郷を思った。


自分が育ったあの村は幻だったろうか?

豊かな森、冷たい小川――ここには一本の果樹もない。
物心ついたころから家畜の世話や畑仕事に明け暮れ、樵としても土に親しんだ彼には、

書物から学ばずとも作物の実りや気候、樹々について一目見、歩くだけで肌で感じる確かなものがあった。



(ひどい土地だ。魔物が現れてからここまで荒れたのではない)




と、ごろりと何か苔色の固まりが、道ともつかぬ道の行く手を阻む。


それはすぐ両手をつき立ち上がり彼に向き直った。
無意識に硬くなった体を緩めて息を吐き出しながら、少年は幼な子に声をかけた。



「こんな所にひとりで? 家はどこ、家族は?」

少女は俯いたまま、乾いた唇を唾で少し湿らせてから、口を開いた。


「父さまがね、死んだの。」



「もし、施しをくれるなら、今すぐお腹に詰め込める物にして」

少女は無駄な言葉は話さなかった。目ばかりが野良猫のように光っていた。


みすぼらしい若者が幾らかの食料を手渡すと少女はぎこちなく微笑み、名前を教えてくれた。
乾いた風が冷たくなり、二人は汚れた外套を首元に寄せ集めた。