「導師、お考えを改められては如何です。」
二つの長い影が着かず離れず、幽玄に紫がかった石の敷き詰められた床を並んで滑ってゆく。不可思議な同色の円柱がその間を遮る一瞬だけ、別つ事が出来るような親密さを影は持っていた。
「あれは神殿に祀るものではない。されど時と塵に埋もれるままにおくは愚の骨頂。」
「最もですが、アルナザの刻に然るべき儀式を執り行わないのであれば――」
「ならぬ。」
ここ数週間の間に幾度となく繰り替えされた要望を、緩やかに歩みながら老魔導師はすげなくあしらった。
「何故。」
尚も若き弟子は食い下がる。その細い面と着衣を許されたローブとがどれ程釣り合わぬものか知る者は少ない。