人里遠く、秘められた洞窟に一歩足を踏み入れると、彼は何故か泥炭が燻す煙を思い出した。

懐かしい匂い。奥へと進むと、橙の光が岩肌を照らしているのが分かった。

(炎?……違う。まるで、金のような色だ)

山賊達の隠し財宝だろうかと、彼は訝った。



(ドラゴン―――!)


畏怖が体中を駆け抜け、圧倒的な存在感に押し潰されそうになる。

少年が思い描いていたよりもずっと竜は小さかったにも関わらず、その場から逃げないように自分を叱咤するのがやっとだった。


鋼を張り合わせたような鱗が規則正しく上下するたび、しゅうしゅうと熱い蒸気が広がり辺りを湿らせた。