目を開けると一面の蒼が飛び込んできた。
(ここは何処だろう)
もいだばかりの林檎のような、甘く儚い香りが辺りに漂っている。
次に目覚めたのは耳だった。
《海より産まれ 地に生き 空に憧れるものたち……》
どこか遠くから、この世のものとは思えないほど美しい歌が響いてきた。
(僕も死んだんだな)
少年は安堵したが、身じろぎした刹那金属の冷たさが小指にぶつかり、身震いした。
「あれ」は、夢ではなく現実でここはその続きなのだ……。
淡い期待を自分の抜いた剣に砕かれた直後、疲労と激しい喉の渇きが襲ってきた。
悪夢のようなあの夜から、どうやって此処にたどり着いたのだろう?
考えようとしても酷く痛む頭を抱え動けずに、彼はしばらく浅い呼吸だけを繰り返していた。