少年の左腕が剣に引っ張り上げられた。切っ先は真っ直ぐに賢者の喉元を狙っている。
彼ははっきりと聖なる剣の意思を感じた。
よろめき立ち上がり手招きをするような身振りをし、偽りの神は引き攣った嘲笑を上げた。
「むざむざと竜を手懐け、私に剣を捧げに来るとはな……!」
( 違 う )
――ザンナの話には続きがあるの
愚かなザンナに残ったのは 黄金の首飾りと残りわずかな命だけ
ザンナは自分の身代わりにと 若い娘を探すの
呪われた首飾りの新しい持ち主にするためにね――
「……そしてザンナが残酷なカイリャハになるんだ」
「そうよ 繰り返すの
今までも繰り返してきたのよ」
「愚かなザンナ 哀れなザンナ……」
( 僕はザンナにはならない )
初めて、聖なる剣よりも自分に課せられた称号よりも強い意志で、剣を空高く掲げ――
( この剣で運命を斬ってみせる )
英雄は、力の限り空に向かって叫んだ。
「ヘルモーズよ、お力を!」