漸く手にした石の紅く燃える輝きは、恍惚を浮かべる青白い顔から、その代償として微かに残っていた彼の何かを吸い取っていくかのようであった。

(そう、真に力ある者だけ……)


 若き魔導師がその名と同様に忌み嫌った、鳶色と藍緑の入り混じった複雑な目の色は徐々に平坦な鈍色に変わっていった。

 だが、もうそんな些末なことに思い煩う必要はないのだ。

 魔導師は秘石を懐に忍ばせ、ガルラダスの塔を足早に立ち去っていく。
 少年期の全てを捧げた古巣も彼にとっては最早只の抜け殻に過ぎず、去り際に恩師の骸を見下ろす眼差しには、憐憫の影さえ残してはいなかった。