なんとか村の入り口まで逃げ切った。 


ここまで来ればもう大丈夫だろう。僕は牧場の柵にもたれかかった。


額から流れた汗を拭うと、ぬるりと嫌な感触がした。 


魔物の血が混ざっていた。 



『聖剣は村を守ってくれている……』 

アヌク婆ちゃんの口癖。その意味がやっと分かった。剣は魔物を封印していた。

抜いてはいけないものだったんだ。 


鼓動が静まると、罪悪感が重くのしかかってきた。 


だけど、その重圧でさえ、心の底からわき上がる誇らしさを抑えることは出来なかった。 

僕は英雄にしか抜けない剣を抜いたんだ。 



英雄」!

なんて素晴らしい響きなんだろう? 

神話の中の王たちや、古の大賢者が急に身近に思えてくるほど。 



そうだ、早くみんなに知らせないと。 

驚くだろうな。都からでも、神殿からでもなくて 

こんな小さな村から英雄が生まれたんだから!




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